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オリエンターレ盆地の黒いリング 1
Updated : 2009.04.17
Observation date : 2008.03.30
moon_navi

オリエンターレ盆地(東の海)は、巨大衝突盆地のひとつです。巨大衝突盆地とは、通常のクレータに比べてはるかに大きな衝突地形で、単なる窪みではなく、複数の環状地形が特徴です。オリエンターレ盆地は約38億5千万年前の衝突で生じたもので、月の巨大衝突盆地の中では最もよく地形が保存されています。研究者によって数え方に差はあるものの、六重にもおよぶ多重環状構造が存在するとされています(水色の円はその一部)。月の西端にあって半分隠されているにも関わらず、非常に特徴的な地形で、古くから注目されてきました。西の縁にあるのに東の海と命名されたのは、像が倒立してしまう望遠鏡では見かけ上東にあるように見えるためです。環状地形には月地殻の内部の物質が露出しているとも言われており、月地殻の進化を研究する上で重要な観測対象です。

ところで、この写真の下の方に、黒い別の輪(緑破線の円)があることに気づきますか?月面にある円形のものというと、大抵が衝突クレータですが、この環状構造はちょっと違います。マルチバンドイメージャのデータで拡大して見てみると(右図)、中央に1つ穴があいていて、そこから等距離に分布する黒い輪があるように見えます。地形を調べても、その部分の高さは周囲と変わらないので、ただ表面の色が変わっているだけの、薄い構造であることが分かります。これは一体なんでしょうか?かぐや以前の研究では、中央の穴が噴火口で、その周囲の黒いものが高速で噴出する熔岩の飛沫である、と言われていました。真空中で火口から噴き出した熔岩が飛沫となり、放物線軌道を描いて、火口から一定の距離のところに堆積した、と考えられます(断面図)。飛沫の堆積物が極めて薄い層であることから、ごく短い単発的な噴火だったことが示唆されます。なぜなら、もし長期間噴火が続いたら、噴出物が様々な速度で出てきて、環状の構造ではなくもっと拡がった状態になるはずです。さらに、噴出物が地形としてはっきりするほど、厚く堆積してしまうかもしれません。こうした、地球上では見られないような真空中における地質特徴を詳細に解析できるようになったのは、かぐやの大きな成果のひとつです。

※1 MIでもTCと同じように異なるバンド画像間での視差を利用して立体視により、地形情報を得ることができます。標高の精度はTCよりも劣りますが、MIの分光画像と同じ照明条件の画像から作成した地形情報の方が精度がよくなる場合があったり、地形情報と分光画像中の場所対応付けが簡単であったりというメリットもあります。

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