<第八回>
宇宙航空研究開発機構 SELENEプロジェクトチーム
開発員 奥村 隼人

あれは小学生のころ、両親に天体望遠鏡を買ってもらい、よく宇宙を眺めていました。小さい天体望遠鏡でしたが、地球から最も近い天体である月は大きく映し出され、表面の凹凸、大気でゆらぐ光、そして刻々と動いていく様が見て取れ、衝撃をうけたことを覚えています。あれから幾年月が経ち、その月に向かう衛星「かぐや」のプロジェクトに関わるとは思ってもみませんでした。こんな絶好の月を見る機会にまためぐり会えるなんて。

私は今、プロジェクトチームにて主に「かぐや」のサイエンス促進を担当しています。「かぐや」のサイエンスは、おおよそ150名の研究者に支えられています。先日、日本地球惑星科学連合の学会で、「かぐや」の特別セッションが開催されましたが、たくさんの研究者が集結し、活発な議論がかわされ、大いに盛上りました。皆さんの生き生きとした発表、笑顔が大変印象的でした。なにしろ、「かぐや」のデータは、まだ世界の誰も見たことがないような素晴らしいデータや画像ばかりなのです。

その「かぐや」のデータ・画像は、「かぐや画像ギャラリー」で見ることができます。「かぐや」は15種類もの観測ミッションで、月表面を詳細に調べるのはもちろん、地下、重力、磁場、周辺環境に至るまで様々なデータを取得します。なかでも「かぐや」の見た月面は、大気の影響を受けない月上空100kmから見たもので、非常に鮮明で、かつ迫力があります。望遠鏡で見た月や目で見た月と比べてみてはいかがでしょうか。そして、もし月を見たときは「かぐや」を思い出してもらえると嬉しいです。「かぐや」は今、月の周りを回っています。秒速約1.6kmの速さで月の北極と南極上空を通過する軌道を飛び、約2時間で月を1周しています。月を見ているそのとき、地上のアンテナは「かぐや」と通信し、相模原の運用室では「かぐや」の状態を見たり、「かぐや」にコマンドを送っているかもしれません。

「かぐや」の観測はまだ半ばで、データも解析途中です。サイエンス成果がでてくるのはまだまだこれからです。かぐや画像ギャラリーでは、今後も最新の画像・データを紹介していきます。これからも「かぐや」を宜しくお願いします。

2008年6月