【「かぐや」の成果 ~ お知らせ 2015.3月 】





【SPAにおける磁気異常の原因について】


    本内容はNewmanらによって2015年3月の第46回月惑星科学会議において発表された「Characteristics of magnetic sources in the region of the lunar South Pole-Aitken basin(L.C. Newman et al.)」に関するものです。


    これまでの月探査の中で磁力計による観測ミッションは、1998年に米国が打上げたルナ・プロスペクターと、2007年に日本が打上げた「かぐや」に搭載されていましたが、それぞれの観測結果において、月の裏側の南極付近の「南極–エイトケン盆地(SPA)」が、他の地域と比較して強い磁気異常を示す事が示されました。


    このSPAにおける強い磁気異常の原因については複合的なものだと考えられており、衝突時の衝撃によるもの、衝突で噴出した鉄に富む物質の分布によるもの、多数の貫入岩体・岩床によるもの、などがその原因とされています。

    今回の研究では、定常運用終了後にこれまで100km上空から観測していた「かぐや」が、50km上空の低軌道での観測を行った事で得られたデータをもとに、より地上分解能の高い磁気異常マップが作成され、またスペクトル処理法を新たに試行することで磁気異常の原因となる物質の分布が推定されました。

    磁気以上の原因と考えられる物質の分布は、SPA地域の表層近くに厚さ16km-26kmで分布していると推定されました。また、このレイヤーは磁気異常の変化がそれほど大きくない場所にも分布していると推定されます。さらに、解析により、その分布を貫くような多数の岩脈状の物質や岩床状の物質も存在することが推測されました。特に、楕円状と見られる貫入岩床の中心の位置は北緯7度、東経183度を示しており、これは高分解能化された新しい磁気異常マップに示された異常箇所と非常に良い一致を示しています。


    今回の結果に、ルナ・プロスペクターのデータも再解析して加えることによって、更に精度の高い磁気異常マップの作成や、SPAを取り巻く地域の磁気異常についても解析が進められる予定となっています。



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