「かぐや」カウントダウンレポート No.2
私は情報連絡担当として、種子島と相模原との情報交換を行う仕事についていました。
射点の現場の雰囲気を皆様にレポートいたします。また、打ち上げの時は記者と一緒に観望台にて「かぐや」の打ち上げを見届けておりましたので、併せて皆様にレポートいたします。

発射台のH-IIA13号機
「22時過ぎ、小雨の中をロケットがVABから射点に移動を開始する。時速1km程度で30分ほどかけて射点に到着する。ロケット側の作業が続く。23時頃に衛星の外部電源を入れるためにロケットの下部にある専用の部屋に向かう。射点に着くころには、バケツをひっくり返したような雨が降り続き、車から部屋に入るまでに全身ずぶぬれとなる。この雨だとVABに戻るのだろうか?と思いながらKAGUYAを立ち上げるための外部電源装置類の立ち上げを行っていく。インターカムを通じて、1時間ほどチェックを行いながら衛星の電源を投入していく。無事にKAGUYAが目覚めるのを確認してから、部屋を出て射点から退避をする。先ほどの雨は嘘だったかのように上がり、不思議なぐらい静かな夜であった。もしかしたら、打ち上げられるか?」

H-IIA13号機リフトオフ

H-IIA13号機リフトオフ

H-IIA13号機リフトオフ
「午前10時、打ち上げの約30分前には雲はほとんどない青空が広がる。風も肌に心地よい程度。多くのプレスが打ち上げの瞬間をとらえようと詰めかけている。
また、放送局も朝のニュースで生中継を行っている様子が見られた。

打ち上げ5分前、カウントダウンが進んでいく。高揚感はあるものの、ドキドキというよりも静かに打ち上げを待つという気分であった。KAGUYAの旅立ちの無事を祈る。カウントダウンが続く、5,4,3,2,1、Lift-off。閃光とともに白煙が舞い上がり、静かに上昇を始める。カメラ越しに見ながらシャッターを切っていく。数秒もするとバリバリと空気を裂く音が聞こえてくる。このころには、ファインダーから目を離し、肉眼でロケットの飛跡を追っていた。ロケットの状態をアナウンスする放送が流れてくる。「順調」という言葉だけが頭に残っていく。白い尾を引きながら、雲間へと消えていく。肉眼ではもう見えないところまで飛んでいった。」

写真/文 高島 健