【「かぐや」の成果 ~ お知らせ 2014.4月 】





【月面の薄い大気層のナトリウムとカリウム分布について】


     本内容は2014年4月17日に米科学雑誌「Journal of Geophysical Research」に掲載された論文「「Structure of the ionized lunar sodium and potassium exosphere: Dawn-dusk asymmetry」(Shoichiro Yokota et al.)」に関するものです。


    本研究では、「かぐや」に搭載された「プラズマ観測装置(PACE)」と「月磁場観測装置(LMAG)」とによって取得されたイオン・磁場データを解析し、月表面及び希薄大気から発生するナトリウムとカリウムイオンの月面分布を調べました。

    月には地球のように厚い大気は有りませんが、非常に希薄な大気、外気圏と呼ばれるものが存在します。これまで地上からの望遠鏡による観測によって、ナトリウムとカリウムの外気圏があることが分かっていました。地上からの観測では高度及び緯度方向の分布を得ることが出来ますが、「かぐや」によるその場観測によって、今回新たに経度分布を得ることが出来ました。(図1)

    ナトリウム及びカリウムの緯度分布については、地上からの観測の結果と一致した、太陽直下点をピークとしたコサインの関数で近似出来ました。経度分布についても同様であることが予想されましたが、「かぐや」による観測結果では朝方にピークが偏った非対称があることが示されました。
    月の外気圏は、月面から放出され直ちに宇宙空間に失われていく粒子によって構成される非常に過渡的なものです。今回観測したナトリウム及びカリウム分布の朝夕非対称の原因の一つとして、月面に備蓄された月外気圏を構成する粒子が日中にどんどん枯渇していき、夕方には朝の半分程度まで減少することが考えられます。

    月のように水星や小惑星にもナトリウム及びカリウム外気圏があることが知られています。本研究の結果は、小天体と宇宙環境の相互作用の研究に大きな貢献をすると期待されます。






図1:MAP-PACE-IMAによる月から来るナトリウム及びカリウムの経度分布




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